ストーリー
ある患者さんの「できた!」の瞬間〜自立支援の現場から
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今日は、当院のリハビリと介護の現場で、私たちが何よりも大切にしている「できた!」の瞬間についてお話しします。
※この記事のエピソードは、ご本人が特定されないよう、複数の事例をもとに再構成しています。
「もうトイレは、おむつでいいよ」
80代のある患者さんは、肺炎で入院されたあと、ベッドで過ごす時間が長くなり、足の力がすっかり落ちてしまいました。看護師が失礼のないようおむつの交換をするたび、その方は決まって、小さな声でこうおっしゃいました。
「悪いねえ。……もう、おむつでいいよ」
言葉のうえでは「いいよ」でも、その表情から、あきらめと恥ずかしさが伝わってきました。私たちは、ご本人と話し合って、ひとつの目標を立てました。「日中は、自分の足でトイレに行く」。それだけを目指すことにしたのです。
小さな一歩を、科学の目で支える
当院が取り組む科学的介護(自立支援)は、「頑張れ」と励ますだけの介護ではありません。
水分は足りているか。食事はきちんと摂れているか。日中に身体を起こしている時間はどれくらいか。歩行のどの動作に不安があるのか——。日々の記録をチームで共有しながら、「できない理由」をひとつずつ取り除いていきます。
その方の場合は、まず水分摂取を見直すことから始めました。脱水気味だと、頭がぼんやりして日中の活動量が落ちてしまうからです。それから、ベッドの横に立つ練習、手すりを使って数歩あるく練習。リハビリの時間だけでなく、病棟の看護師や看護助手も「今日は洗面台まで歩いてみましょうか」と、暮らしの中に小さな挑戦を織り込んでいきました。
その瞬間は、静かにやってきました
3週間ほど経ったある日の午後。その方は、見守りの職員が手を添える中、ご自分の足で廊下を歩き、トイレの扉の前に立ちました。
用を終えて出てこられたとき、その方は職員の顔を見て、ひとこと。
「……できたねえ」
大きな拍手も、派手な演出もありません。けれど、その小さな「できた」が、その方の表情を見違えるほど明るくしました。翌日から、朝の着替えを自分でやってみようとされるようになり、面会に来られたご家族は「入院前より元気そう」と驚かれていました。
「できること」は、その人の尊厳です
私たちが自立支援にこだわるのは、リハビリの成績のためではありません。「自分のことを自分でできる」という感覚が、その人の誇りと、生きる意欲そのものを支えていると知っているからです。
もちろん、すべてが元通りになるわけではありません。それでも、「その人らしく生きる」を支えるために、今日もっている力を最大限に活かすお手伝いはできます。
としま昭和病院では、こうした自立支援の考え方を、入院中だけでなく、訪問リハビリテーションや院内デイサービスにもつなげています。ご家族の介護で「本人にできることを増やしたい」とお考えの方は、どうぞお気軽にご相談ください。
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